MY FATHER マイ･ファーザー

ブラジルのマナウスという小さな町の郊外の墓地で白骨死体が見つかった。1985年。浮かび上がったのが、アウシュヴィッツ収容所で数々の人体実験を行い”死の天使”と呼ぱれ恐れられ、戦後30年にも及ぶ逃亡生活をし続けたヨゼフ・メンゲレ。だが、これは本当に彼のものなのか。この事件の取材に世界中から報道記者やカメラマンやTVクルーが集まってきた。その群集の中には、被害者であるユダヤ人、アメリカ人弁護士ポール・ミンスキーそして、メンゲレの息子ヘルマンの姿もあったのだ。1977年1月。35歳のヘルマンは実の父親と対面しようとしていた。30年以上も逃亡生活を続けているメンゲレの住まいは、マナウスのアルゲン通り5555番地にある質素な家だった。メンゲレはそこで彼を匿う人々に守られながら生活していた。ニューヨーク・ユダヤ人協会はアウシュヴィッツ収容所で行われていた、医師たちによる残酷きわまりない人体実験から奇跡的に命を取り留めた双子たちの、損害賠償請求のために、弁護士ポール・ミンスキーを雇い、そして彼はヘルマンが父親の死を偽装しているのではないかと疑いをかけた。ミンスキーの目的は、被害にあった双子の治療のためにメンゲレのカルテを入手すること。そして、ドイツヘ損害賠償を請求するために、メンゲレが本当に死んだのかを確認することだった。ヘルマンは8年前に初めてマナウスで対面した父親との日々についてミンスキーに語り始めるのだった。